臨床工学技士・新倉秀雄さんは40年以上も透析治療に携わってきた大ベテラン。長年、透析治療に従事してきて大切にされてきたことは何だったのでしょうか。
(1)患者様の声に耳を傾け、お身体とお気持ちを把握することが大切
−こんにちは、よろしくお願いします。
(新倉さん)
こんにちは、よろしくお願いします。
−新倉さんは臨床工学技士さんになって何年ですか。
(新倉さん)
昭和62年に、臨床工学技士が法律で定められました。
私が透析治療に携わり始めたのは、それより前の昭和50年になります。
通算で40年ほど、透析治療に携わっています。
−大ベテランですね!多くの若いスタッフさんと一緒にお仕事をされています。若い方々の良いところはどのような点だと思われますか。
(新倉さん)
まず、私はパソコンが苦手で、彼らはとても詳しいので教えてもらうことが多いですね(笑)
気さくに教えてくれますし、教え方も上手です。
また、私は40年ほどの経験がありますが、全てを知っているわけではありません。
特に透析装置については、見た目も中身も構造からして(昔とは)全く異なっており、部品点数もとても多くなりました。彼らは機械にも詳しいので、教えてもらうことが多々あります。
一方で、臨床面では私の方が経験があるように思います。
−臨床面というのは、患者様のことですね。
(新倉さん)
そうですね。
まずは、患者様の症状をしっかりと把握することが大事だと考えています。
たとえば、患者様によって服用している薬が違いますし、薬も飲み方によって血圧の変化に違いがでたりします。薬によってどのような影響がでるかを想定しておく必要があります。
そのためには、患者様と十分にお話しをして、患者様から情報を引き出すことが必要です。
−新倉さんが目指している透析治療はどのようなものですか。
(新倉さん)
患者様が疲れない透析治療を提供したいと考えています。
患者様から「(透析治療は)疲れる」という声を聞くことがあります。
その実現のために、患者様お一人お一人で異なるお身体の状態を個々にしっかりと把握して、最適なダイアライザーや薬等について私なりに考えて提案したいと思っています。
−患者様のことをしっかりと捉えずに、治療法を選択すると間違ってしまうということでしょうか。
(新倉さん)
そうですね。
ですから、私としては「本当にこれで正しいのか?」と問いかけるように心がけています。
ある意味「自分を疑う」という視点を持つようにしています。
たとえば、日本の透析医療は世界最高水準にあると思っています。
しかし、ヨーロッパ等でも素晴らしい透析技術がありますので、世界に目を向けて、さらに高いレベルを目指さなくてはいけないと思います。
−医療に関わる方々が満足してしまったら、それ以上の向上はないということなのでしょうね。
(新倉さん)
満足というのは自己満足であって、患者様の満足にはなっていないかもしれませんね。
やはり、私にとって大事なのは患者様です。
患者様の声に耳を傾けずして、何が治療なのか?と思いますね。
患者様のお言葉の中には大事なことが隠されています。
−そういった意味では情報共有も大事になるのでしょうね。
(新倉さん)
はい。カンファレンスは非常に大事です。
さまざまな専門性をもつスタッフが知恵を出し合って、一人ひとりの患者様のお身体のデータや家族背景までもみていかなければと思います。
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