第93回東海透析研究会で発表した「ePTFEグラフト移植術後のシャント肢腫脹とドライウェイトについての考察」が最優秀賞を受賞しました。研究チームのメンバーで、発表を行った看護師・高橋美華さんに研究活動についてお話しをうかがいました。
(1)研究した手法で、患者様のお身体が改善されたことに感動
−こんにちは。よろしくお願いします。
(高橋さん)
こんにちは。よろしくお願いします。
−今日は「ePTFEグラフト移植術後のシャント肢腫脹とドライウェイトについての考察」という研究活動について教えてください。
(高橋さん)
はい。ePTFEグラフトというのは人工血管の1つの種類で、自分の皮膚に人工血管が馴染んでいくように一体化する特徴があります。
この人工血管を使用すると、術後直後から皮膚がすごく腫れてしまうことがあります。さらに、透析治療中に血圧が下がってしまい、除水が十分に出来ないというケースを私も何度か見ていました。
上司から「改善するための方法を一緒に考えていきませんか?」とお誘いいただき、その活動を研究としてまとめたものになります。
−とても難しそうな研究というのが率直な感想です。
(高橋さん)
私も、最初の頃はどのように研究をしていったら良いか?想像さえつきませんでした。
でも、実際に患者様の血圧が下がってしまい、除水がなかなか出来ない状態を見ていて、このままだと患者様の心臓に負担がかかってしまうので、何とかしたいという気持ちがありました。
研究の経験がない自分に出来るのか不安でしたが、一緒に勉強させてもらいたいと思って研究に参加しました。
−研究のための研究ではなくて、患者様のお身体を改善するための活動を、研究成果としてまとめられているのですね。
(高橋さん)
はい。もちろん、そうです。患者様のための研究です。
−研究において一番難しかったことは何ですか。
(高橋さん)
データ収集です。
同じ条件下で集めたデータでないと比較できないので、一定条件で行えるデータ収集の方法を考えなければなりませんでした。人工血管を導入してから腫れが収まるまでの期間、しっかりとデータを収集するのは大変でしたが、アドバイスをくださった先輩、部長、先生のおかげで頑張れました。
また、患者様にも説明をさせていただき、ご納得いただいて上で進めました。
−最終的には、どのようにして改善できたのですか。
(高橋さん)
腫れている部分には水分が溜まっています。その部分の水分は透析治療では除水できないので、身体全体の重さで見ると、除水できていないように見えてしまいます。
ですから、腫れの重さを計測して、その分の重さは身体に残っていても問題がないという結論に達しました。
−なるほど!コロンブスの卵の発想ですね!
(高橋さん)
はい!会議でその考えを聞いたときに「すごい!」と思いました。
腫れている部分の重さが1kgばかりか3kgもあることがありました。
腫れている部分のお水は身体に残っていても問題ないですよ、心配しなくてもいいですよと患者様にお伝えできるようになりました。
−原因が明確になると、患者様も安心されるでしょうね。
(高橋さん)
はい。腫れている部分をきちんと測定できますし、血液データ等から見てもお身体への影響がないことが確認できました。
さらに、骨折で足が腫れてしまった場合など、さまざまな「腫れている状態」に応用できることもわかりました。
−すごいですね。中津川共立クリニックの一人の患者様のために始めたことが、他の患者様にも役立つというのは本当に素晴らしいことですね。
(高橋さん)
はい。私自身がすごく感動しました。
初めは「私に出来るのかな?」と(研究活動に参加するのを)ためらいましたが、皆さんと一緒に研究をして本当に良かったです。皆さんに感謝です。 |